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2014年6月

2014.06.29

神様のカルテ(夏川草介、小学館)

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この春、大学進学で家を離れた下の子が置いて行った本から見つけて読んでみた本。

夏目漱石を模したと作中でも語られている一人称の文体が読み辛くて、何度か断念しかけたが、それに慣れてきてようやく読み終えることができた。夏目漱石の文体はこんなには”くどく”はない。

内容はどこかで読んだ/観たことのあるような地域医療を支える医師の活躍談で、本の帯に書かれているほどの深い感動は感じない。しかし、50歳を過ぎて、涙腺の締まりが悪くなった体は素直に反応して何度か泣かされることになった。

2014.06.19

考えるヒント(小林秀雄、文春ウェブ文庫、Readerストア)

2014.06.17読了

昭和30年代後半の文芸春秋と朝日新聞への連載をまとめた随筆集。

高校入試で何度か読んだ小林秀雄の随筆を久しぶりに読んでみたくなって購入、最初は気合を入れて入試問題を読むように熟読し始めた。当時はWebもなかったので、分からないことがあってもせいぜい辞書や百科事典を当たるしかなく、中途半端であきらめるしかなかったが、現在は芋づる式に情報が出てきて理解が深まる。とはいえ、それは結構疲れる作業でもあって、半分ぐらいまではがんばって熟読してみたが、著者の50年前の考えを必死で追う必然性を考え直して熟読は中止し、以後は普通に読んだ。

なぜ難解に感ずるのかを考えながら読んだが、結局のところ著者と読者の知的背景、これまでに得た知識や関心を持つ分野などが違っていることに尽きると感じた。これまで深く学んだことのない本居宣長の話が突如出てきてもついていけないが、少しでも読んだことがある福澤諭吉の話ならついていけるし、理解も進む。当時の文芸春秋の読者にはこの程度までと想定していたということだろう。後半に出てくる朝日新聞での随筆は知的背景のレベルを下げた内容で、気楽に読むことができた。

現代の文章では「わかりやすい表現」が当たり前に求められることには、議論の深みがなくなるといった批判もある。でも、専門家の蛸壺があらゆる分野に広がった現代では、読者にとって専門外の情報を正しく理解してもらいたいという姿勢の方が、結局のところ得るところが大きいと、この本を読んで改めて理解した。

面白かったのは最後に出てきたソ連訪問に関する随筆と講演録でのソ連に対する肯定的な記述だった。Wikipediaを読む限りでは戦前、戦中、戦後と複雑な知的遍歴を経ている著者が、単純にソ連を肯定するとは思えないが、当時は著者を巻き込む何らかの「時代の流れ」があったのかもしれない。

著作を深く理解するためには、著者の一生を俯瞰して理解しなければならないとすると、研究対象として真剣に取り組む必要がある。そんな気力も能力もない私は、もっと気楽に読めるものを選ぶべきかなと感じる。

2014.06.08

氷点(三浦綾子、角川e文庫、ReaderStore)

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2014.05.31 読了

キリスト教の本を読んでいて、キリスト教の「許し」をテーマにした本だと紹介されていたので読んでみた。確かに、許しがテーマであり、キリスト教へ向かう場面もあるのだが、特別にそれを意識した小説とは感じなかった。

著者のデビュー作ということもあり、重たいテーマに比べて描写があっさりし過ぎていること、ストーリーもいかにもありそうな展開で、全体に古さを感じてしまった。でも、こういった作品をお手本にして、いわゆる昼メロや昭和時代のドロドロしたドラマが作られたんだろうなと思う。

続編を読んでみたいような、もうお腹いっぱいのような感じで、とりあえず判断は先送り。

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