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2015年9月

2015.09.28

信長の棺 上・下(加藤廣、文芸春秋、ReaderStore)

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2015.09.26読了。

本能寺の変の後、信長の遺体が見つからなかったという謎を、信長公記の作者である太田牛一の立場からの謎解きという視点で書かれた歴史小説。

読みやすい文体かつ飽きさせない展開で、一気に上下巻を読み終えた。謎解き自体も"そういうこともあったかも?"と思わせる内容で、楽しく読めた。
ただし、明らかな男性視点の性的表現の部分には違和感。物語へつなげる工夫はしているものの女性が読んだら不愉快で余計な表現と感じそう。発表された2005年時点では、この程度の表現は、まだ許容範囲だったのかもしれない。

2015.09.09

なんとなくクリスタル(田中康夫、河出文庫、Reader Store)

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2015.09.05読了

巻末に本文とは直接の関連なしに出生率低下予測のデータが書かれていたという点で話題になっていたので、30余年を過ぎてようやく読んでみた。確かに少子化までは示しているが高齢化には踏み込んでおらず、子供一人あたりの消費額が増えるというメッセージだったのだろうか?

この本は自分の大学進学の少し前にベストセラーあるいはそれ以上の社会現象になっていたが、ブランド品には全く縁がなく東京へのあこがれも全くなかったので完全に無視していた。今読んでみると、その後のバブル経済での過剰消費に向けたガイダンスとなっているのは明らかで、物を売りたい人たちが大歓迎で持上げたのだろう。

本編にはあまり内容はない一方で、ファッションブランドと洋楽が中心の詳細な注記のほうが話題となったが、結局のところは受験勉強の応用編。それでもブランドの氾濫を経験していない当時の人達には大いなる発見だったのだろう。でも当時、読んでいたら生活が変わったかと考えてみると、完全に否定できる。別の人種の別世界の話であったことは間違いない。

また、バブル崩壊以後に顕在化した"自由に消費できない人(貧困層)"の存在は完全に枠外になっていて、国民総中流と言われていた時代性からくる限界も感じる。その点でも出生率が重たい提言だったとは考えにくいと感じる。

面白いのは主人公が東京へ来るまでの間に住んでいた神戸が、おしゃれな街とされている点。今でも人気観光地だが、当時は別格だったように記憶している。ポートアイランド開発やポートピア博へ向けた準備など全国に紹介される機会が多く、メディアへの露出頻度が投資を呼び込んでバブル経済が先行していたのかもしれない。この後に続く大阪での花博など、バブル期までは関西も大いに栄えていたと思うのだが、バブル崩壊と阪神大震災が重なった90年代半ばの時期が、関西の凋落の始まりだったことを思い出した。

2015.09.06

いつか陽のあたる場所で(乃南アサ、新潮社文庫、Reader Store)

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2015.09.03読了

昏睡強盗と殺人の罪を犯して服役した二人の女性が出所後につましい生活から社会復帰していこうとする姿を描いた小説。本来は重たいテーマなのだが、テレビドラマの脚本のような典型的な展開はちょっと残念。疲れている時でもさらりと読めるような軽さも時には良いのだけど、「そこから得たもの」が見つからない読書は物足りない。

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